本年度においては、事業所統計・国勢調査などの集計結果や会社年鑑、組織図・事業所要覧を収集し、各広域中心都市における1990年代以降のオフィスの立地動向を把握した。その結果、景気低迷期においても、札幌・仙台・広島・福岡の4つの広域中心都市では、閉鎖・撤退オフィス数をはるかに超える数の新規の支社オフィスが立地する傾向にあることが明らかとなった。 この背景には、企業がリストラの一環として、支社・営業所等のオフィスの統合・廃止などを進めたことがあげられよう。すなわち、わが国の都市階層において、広域中心都市よりも下位階層の諸都市における支社・営業所等オフィスの廃止が進められ、その多くが広域中心都市に立地する上位オフィスに機能的に統合されたものと推察される。また、新規に広域中心都市に支社・営業所等オフィスを多く設置したのは、情報サービス系企業が多く、すでに定量のオフィスおよび関連事業所集積をもつ広域中心都市の立地条件の優位性に吸引されてオフィスを設置したものと考えられる。いずれにせよ景気低迷期においても広域中心都市の拠点性の高さは維持されているといえよう。 以上の背景についての考察は、今年度の調査結果に基づく推察であるが、次年度においては各広域中心都市に立地するオフィスや関係機関に対するアンケート・聞き取り調査により、より詳細な背景・要因について検討を加える。さらに、各広域中心都市内部におけるオフィスの立地変動状況から都市内部中心地階層の変動についても考察する。
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