本研究では、1990年後半から今世紀初頭に関して、広域中心都市である札幌・仙台・広島・福岡の4都市をとりあげ、オフィス床面積の変動状況について、その総量、需要量、供給量の3つの側面から検討を加え、オフィス集積の地区別変動傾向から各都市の内部中心地構造の変容について考察した。主な結果は、以下のようにまとめられる。 (1).各都市において、従来からのオフィス活動の中心地はいずれもオフィスの集積状況に大きな変化はない。そのため、オフィス立地からみた内部中心地階層は各都市においてほとんど変化していないといえる。この点は、小売業・サービス業など他の指標を用いた従来の都市内部中心地構造に関しての特性とはかなり異なる。すなわち、従来の特性ではさまざまなレベルでの中心地が都市内部に形成されるが、オフィス立地からみた中心地階層では、最上位中心地(都心部である場合がほとんどであるが)が圧倒的な中心性の大きさをもち、それに次ぐ中心地の立地も最上位中心地の周辺であることが多い。いわば最上位中心地から同心円的にオフィス中心地区が立地し、しかもその空間的な範囲は都心およびその周辺地区に限定される特性をもつ。 (2).(1)の指摘と関連するが、福岡においては、最上位中心地が1つではなく、天神と博多駅前の二極構造を示している。博多駅前地区は1980年代後半から1990年代前半にかけて、多くの新規オフィスが集積し、天神と並ぶオフィス中心地となったのである。また、仙台や広島においてもJR駅周辺地区においてオフィス空間の需要・供給の増加がみられる。かかる傾向はJR駅周辺地区が副都心化しつつある兆候とも考えられるが、仙台・広島だけではなく、札幌・福岡も同様に、最上位中心地と各都市のJR中心駅との直線距離は1km程度であり、これを副都心の形成と考えるのか、既存の上位中心地の外延的拡大とみなすのか、評価は難しい。ただし、現実のオフィス業務地区の空間的連続性からみれば福岡の場合には明瞭な2つの中心地として識別可能である。
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