研究概要 |
本研究では、瀬戸内海地域を対象に、観光・レジャー活動と、環境とのバランスを作り上げるための条件について検討をし、最終的に地域経済.社会に貢献する、環境に負担をかけない、瀬戸内海地域にふさわしい観光の方向を提案することを目指した。 フンクは、観光とレジャーに関する概念の整備を行った。広島県・愛媛県を中心に、マリンレジャーをテーマにし、プレジャーボートの現状、マリンレジャー参加者の行動パターンや考え方、マリーナの開発と地域との関係を調べ、受け入れ側になる島の住民に対する調査も行った。その結果、新しい施設の開発よりも、既存の港や施設の複合的利用や再利用、またはマリンレジャーに関する知識を提供しながら参加のきっかけを作る工夫が望ましいことが明らかになった。磯部は、岡山県・香川県を対象に、観光・レクリエーションに対する漁業者の対応と漁業の動向について検討を加え、環境論の基本的な研究を進めた。また、行政側の観光政策に、環境の視点がどのように取り組まれてきたか調べた。漁業などの体験学習やマリンレジャーが普及するなかで、漁業や船路などの海域利用との調整が必要とされる一方、瀬戸内海地域が抱えている環境問題は具体的な体験学習の対象にもなりえることが明らかになった。木本は、山口県柳井・大島地域を対象として、高度成長期以降の地域政策について整理した。具体的には、山陽道の整備や大島架橋(および無料化)にともなう、企業誘致から観光振興への重心の移動や、リゾート開発の現状を分析し、併せて環境に配慮した観光への新たな取り組みについて紹介した。淺野は,環境教育的なエコツーリズムの観点から,具体的な事例として広島県宮島町のエコツーリズムの試みについて,また,広域的なデータ収集として瀬戸内海沿岸市町村における環境教育資源利用の実態について調べた。その結果、環境教育では「瀬戸内海」が全体として意識されず、主に子供が自然に親しめさせる場として利用されていることが明らかになった。 観光・レジャー活動が多様化する中で、海と接する機会が増えてきた。しかしながら、現状では、活動の多様化が、環境とのよりよい関係を招来しているとは言えず、逆に、一部では景観破壊や水質汚染など、環境への負荷を増していると言えよう。本研究では、その原因として、「海」への意識の不十分さや、観光・レジャー活動と環境との調整の困難さを指摘する一方で、事例紹介を通じて、そうした諸問題への具体的取り組みについて検討した。
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