1年目にあたる平成13年度は、研究の目標を達成するために、全国の町村営電気事業の開業自治体への資料現存確認と確認できた町村への資料調査を実施した。資料確認作業は、これまでの研究により合併の行われていない旧町村に資料の現存可能性が高いことが判明していたので、明治以降、合併をしていない町村を対象として実施した。その結果、岩手県葛巻町、岐阜県宮村、石川県鶴来町、長野県駒ヶ根市、鹿児島県知名町で資料が保存されていることが判明し、広島県八千代町では村営電気当時の聞き取り資料のあることが判明した。そこで今年度は岐阜県宮村、岩手県葛巻町、広島県八千代町で資料収集および現地聞き取り調査を実施した。岐阜県宮村と岩手県葛巻町は、教育委員会が資料を保存しており、町村営電気事業の成立条件が究明可能な資料を発見することができた。とりわけ岐阜県宮村で発見できた村民の寄付金に関するデータは、地主小作制度下における地域の社会資本整備に地主、小作層がどのように対応したのかを知ることのできる貴重な資料として特筆される。今年度の成果の一部は、「戦前における村営電気事業の設立と村落構造-岐阜県宮村を事例として-」と題して、02.3.30に日本地理学会春季大会において発表する。
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