研究概要 |
本研究の日的は,戦前,農山村地城に展開していた町村営電気事業の地域的成立条件を明らかにすることにある。戦前の電気事業の研究は,日本経済史や日本経営史研究で進められてきたが,町村営電気事業に着目した研究は存在していない。研究費の交付を受けた3年の間に,それ以前から進めていた調査とあわせ,我が国の町村営電気開業地域における資史料の収集をほぼ終えることが出来たことは特筆される。とりわけ,岐阜県宮村における膨大な資料の発掘と収集は,大正期における村営電気の地域的成立メカニズムを解明するうえで,貴重な事例となった。また,これまで資料収集の機会に恵まれなかった離島地域の資料収集もこの研究期間中に終えられたことも成果として大きい。特に北海道旧鬼脇村営電気事業関係資料の存在が明らかになり,離島における地域電気事業の成立メカニズムを知るに,貴重な資料となった。さらに長野県旧中沢村営電気事業についても,成立条件解明の手掛かりとなる資料を収集することが出来たことは大きな収穫であった。 本研究の最終年度にあたり,国内の未収集地域への調査を行いつつも,比較研究を進めるために海外の事例にも目を向けることにした。対象として選んだのは,米国・カリフォルニア州サクラメント市に1924年に設立が計画されたサクラメント公営電力局(Sacramento Municipal Utility District)である。SMUDは日本の大正時代に設立された官民一体となった電気供給組織であり,高額な電気料金で電力供給を行ってきた大手電灯会社に対抗するために,サクラメント郡の住民投票によってその設立を決定した経緯を持つ。地域住民のための地域住民による公営電力の設立は,日本の町村営電気事業の設立過程と,どのように類似し,異なるのかを調査・研究した。 研究期間中に得られた資史料を精査し,戦前の我が国における町村営電気事業の成立メカニズムを解明しながら,海外の公営電気事業との比較研究を行いつつ,町村営電気事業の歴史的意義を明らかにしたいと考えている。
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