この研究の目的は、近年、地球環境問題が深刻化する中での環境共生に配慮した工業持続的発展のための努力と企業、地方自治体のエコシステム構築に向けての動向について解明することにある。 その目的のために研究者は、まず、平成13年度に、日本工業の主導部門である自動車工業について豊田を中心に環境問題を考慮した自動車生産の展開と工業のグローバルな展開について調査・分析した。また、わが国機械工業の核心をなす東京都大田区の工業集積の構造と、多摩地区に新たに恵生が進行している工業の新たなコンプレックスの構造について環境との対応に考慮しながら分析を行った。続く平成14年度には、鉄鋼業の生産体制変化のなかでの北九州におけるエコタウン形成の実態、大分市における都市域の環境を考慮した生産体制の構築と廃棄物処理のしくみ、東京湾の中核の一つである川崎市における鉄鋼、石油化学工業の構造変化と環境に配慮したエコタウンへのリニューアル、新居浜市における観光をも取り入れた再生など重化学工業のリニューアルについて調査・分析した。さらに、平成15年度においては、これまでの研究を補うと共に、内陸部の繊維工業を先行産業とする自動車部品工業地区である上田地区の環境に考慮した工業展開、公害で知られた水俣市における環境共生型地域再生と活性化システムの構築について調査分析し、さらに、3年間にわたる実態調査に基づく研究について総括すると共に21世紀における持続的工業発展と環境共生を前提とした工業地域政策のあり方について論じた。
|