多自然居住地域とは、県庁所在地レベルの都市(中核都市)から遠隔にある地域が、都市型発展とは異なる発展をつくり出すことを意図したものである。そこでは、自然を活かした生産活動の育成、圏域の中心となる小都市における病院・金融機関・大型店舗などの生活サポート機能が適度なレベルで存在することが求められている。 本研究は2年間に、中核都市から1時間以上を要する小都市を中心にした圏域4か所を対象として実態調査を行うものであるが、本年度は北海道の富良野市と、岩手県遠野市の調査を行なった。 富良野市は北海道の内陸部にある人口2.6万人の小都市であり、積極的な畑作経営に加えて、ブドウ栽培・ワイン製造、チーズの体験工房など、農村としての複合的展開がみられる。しかし生活サポート機能としては、総合病院は存在するものの、大型のショッピングセンターに当たるものはなく、市民の多くは、買回り品を旭川市に求めている。富良野市への通勤流入がみられる上富良野町・中富良野町・南富良野町との連携戦略が待たれる。 遠野市も人口は2.8万人程度であり、かなり面積は広い。ここでは新しい林業設備の展開が進み、都市にはない魅力がつくられつつあると同時に、市街地でも一部区画整理が行なわれて、商店街も再編成されつつある。地元には県立総合病院もあり、大型店舗も立地しているが、アンケートの結果では、入院治療、よそ行きの衣料品等の買い物、レストランの利用などにおいて、中核都市である盛岡市がかなり利用されていることがわかった。 これらの結果は、1時間以上の移動時間が必要な地域においても、中核都市の機能が日常的に利用されていることを示唆し、かえって遠隔地域における地域格差感を大きくしているものとみられる。さらに分析を深め、次年度の事例を踏まえて、結論を導きたい。
|