本年度は、植民地期に作成された朝鮮半島の地籍資料(地籍図・土地台帳など)ついて、韓国・木浦市と、済州道西帰浦市、南済州郡における昨年度までの調査・研究を踏まえ、地籍資料を用いた当時の都市と農村の変容に関する資料の分析と、補足的な資料収集・現地調査を行った。 まず第一に、昨年度調査を行った木浦市、済州道西帰浦市、南済州郡において収集した地籍資料を用いて、植民地期の都市・農村の変容について分析・検討した。木浦市については戦後にまで至る変化を追うことができ、代表者である澁谷は解放前後にまたがる寺社地の変化について学術論文を執筆中である。研究協力者の山元は、投稿論文「日本統治時代における朝鮮半島・木浦府周辺の空間的変容-地籍資料の分析を中心に-」において木浦の空間的変容についてまとめるとともに、済州道西帰浦市の柑橘農園の形成と戦後の変化について、学会発表を行った。 第二に、研究協力者の山元(中部大学・非常勤講師)とともに補足調査のため、2月19日〜26日の日程で韓国に赴いた。韓国ではソウルの国立中央図書館(本館・学位論文館)および済州道内の図書館(耽羅図書館・愚堂図書館など)に赴き、研究課題に関連する既往の研究文献を収集した。また同時に、西帰浦市・南済州郡において、簡単な補足調査を実施した。 第三に、研究分担者の河原は、戦前期の済州島を中心とする日本人の漁民やなど活動について主に日本側の資料に基づいて検討を進め、3月に和歌山県に赴き、当時済州島に居住した日本人を含む、在朝日本人についての資料収集とインタビュー調査を実施した。これにより、地籍資料にあらわれた土地所有者のライフ・ヒストリーが一部明らかになり、戦前期の在朝日本人の姿が具体的に把握できた。
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