本研究の目的は、流通業界における情報化の進展と、これに伴う地方中小卸売業の淘汰が、地方都市の経済基盤に与える影響を実証的に分析し、このような変化が都市の競争力に与える影響を考察することである。 この目的に沿って、初年度にあたる平成13年度には、大きく3項目の研究活動を行い、以下に記した知見を得た。まず第一に、商業統計および事業所統計等の基礎資料を用いて、過去20年間における卸売業の推移に関するデータベースを構築するとともに、地方中小卸売業の推移をマクロな視点から整理した。その結果、過去20年間における地方中小卸売業の減少が小売業を上回る速度で進行する一方、その傾向には地域差があることを確認した。第二に、地方卸売業の動向を都市規模や商圏特性などから類型化し、本研究の調査対象地域の候補として、北海道、秋田県、宮城県、富山県、静岡県、岡山県などを抽出した。第二に、内外の研究文献を通じて過去の研究成果を整理し、アンケート調査を含む実査における調査項目の整理および検討を行った。 以上の成果に基づき、平成14年度には、調査対象となる府県を絞り込むとともに、府県全域の卸売業を対象としたアンケート調査を実施する。ここから得られたデータの分析を通じて、卸売業が淘汰される過程を類型化するとともに、各類型を代表する企業数十社に対するヒアリング調査を分担して行う予定である。
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