本研究の目的は、流通業界における情報化の進展と、これに伴う地方中小卸売業の淘汰が、地方都市の経済基盤に与える影響を実証的に分析し、このような変化が都市の競争力に与える影響を考察することである。 この目的に沿って、初年度にあたる平成13年度には、商業統計および事業所統計等の基礎資料を用いて、過去20年間における卸売業の推移に関するデータベースを構築し、地方中小卸売業の推移をマクロな視点から整理した。平成14年度には、初年度の分析に基づき、調査対象地域を東北地方に絞り込むとともに、宮城県仙台市(地方中心都市)、秋田県秋田市(県庁所在地)の消費財卸売業を対象としたアンケート講査を実施した。その結果、情報化が地方卸売業に与えた影響の程度は、都市の階次および卸売業の業種によって異なることが確認された。仙台市、秋田市の調査対象卸売業15社へのヒアリング調査を実施するとともに、得られたデータから、卸売業が淘体される過程を類型化し、その都市間格差を検討した。 その結果、流通システムの情報化が、卸売業を主体とする中間流通システムの上位集中化を加速させたこと、情報化の影響は取扱商品の分野に応じて異なること、情報化が地方中心都市への機能集中を進め、都市システムにおける都市間格差を拡大させていること、を確認した。その上で、中小卸売業に有効な情報化対応が、(1)水平的協業によるスケールメリットの創出、(2)消費者直販や製造卸への転換など、製品の差別化と消費者へのダイレクトマーケティングという2つの方向性であることを指摘し、必要とされる支援政策のあり方を整理した。
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