本年度は研究課題に関して、関係文献および地域政策に関する行政資料の分析を実施した。まず最初に、1990年代以降のイギリスにおける小売商業の地域政策の動向について検討した。その結果、(1)1980年代に、サッチャー政権下で進められた小売商業の開発に関する規制緩和によって、タウンセンターを筆頭とする既存の小売商業地区の停滞・衰退が進んできたこと、(2)1990年代になり、地球温暖化防止を目的とした自動車交通量の削減が重要な政治的課題となり、そのため郊外化を抑止して、公共交通を重視したコンパクトな都市の形成を促す地域政策への転換の必要性がクローズアップされてきたこと、などにより、1990年代の小売商業の地域政策は郊外地域などオフセンターでの小売商業開発を抑制し、既存の小売商業地区の再生(活性化)を促進する方向へと転換してきたことが明らかになった〔研究論文発表、伊東(2002)〕。 次いで、1990年代以降の小売商業の開発動向とタウンセンターの再生に関する政策・戦略について、検討した。その結果、(1)1990年代の地域政策は1994年前後から機能し始め、1990年代中葉以降オフセンターでの小売商業開発が減少し、タウンセンター等の既存の小売商業地区の再生計画・事業が進展してきたこと、(2)タウンセンター再生事業の一つの柱となるタウンセンターマネージメント戦略が全国的に立案・実行されてきているが、その実態や効果について論議するには事例研究の蓄積が必要であること、(3)1990年代以降のタウンセンターの推移については具体的な地域における消費者購買行動や小売業の立地に関する動向を検討する必要があること、などが明らかになった。 以上の結果、次年度以降の研究課題は主に上記の(2)および(3)となることが判明した。
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