1990年代以降、イギリスでは、オフセンターでのスーパーストア、ショッピングセンターなどの小売商業の開発を規制しつつ、既存の小売商業地区の存続・維持・強化を図る地域政策が採られ(PPG6)、タウンセンターを筆頭として、小売商業地区の再生が大きな地域的課題となってきている。本研究では、こうした政策が実施されてきた背景とタウンセンター再生政策の実態および実際のタウンセンター等の小売商業地区の地域的動向について、検討した。 その結果、(1)オフセンターでの各種の大規模小売商業施設の進展によって、小売商業地区ことに小規模小売商業地区の停滞・衰退化が進展してきたこと、(2)タウンセンター等の小売商業地区の再生は、当該商業地区の規模や地域事情によって多様であるが、その再生事業はフードデザート問題を抱える一部の小規模小売商業地区では、近隣再生事業の一環として小売商業地区の再生が行われているのに対して、タウンセンターないしシティセンターでは、全国的に広くタウンセンターの再生プランの策定・実施とタウンセンターマネージメントの導入によって、その再生がハード・ソフト両面から実施されてきていること、(3)具体的なタウンセンターの再生事業は、交通政策・土地利用政策などと一体となった計画が実施され、その再生が良好な結果を生んできているタウンセンターがみられる一方で、十分な成果をみていないタウンセンターも存在していること、(4)またタウンセンターの再生事業の進展によって、当該タウンセンターの商圏内の小規模小売商業地区の衰退を早めることになるケースもみられるなど、地域の小売商業をめぐる新たな問題も生まれてきていること、などの実態が明らかとなった。
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