研究概要 |
本年度は研究の初年度であるため,最初に当該分野に関する既存研究のレビューを行った.高解像度DEMの作成に利用される写真測量法と,その地形学への応用に関する論文を,研究協力者の林とともに200本程度収集し,研究の歴史的経緯と特徴をまとめる作業を行った.その結果,デジタル写真測量の普及にともないこの種の研究が欧米を中心に急増していることや,海外では斜面地形の解析に空中写真測量が有効活用されているが,日本ではこの種の研究が遅れていることなどが判明した.この作業の結果を総説として東京地学協会の学術誌「地学雑誌」に投稿し,受理された. また,南アルプスの山地斜面を対象にデジタル空中写真測量を行い,解像度1mのDEMを作成した.得られたDEMを地理情報システムに入力し,水系網や傾斜の空間分布に関する予察的な分析を行った.同時に,中解像度の50mDEMを用いた地形計測を,南アルプスの全域について実施し,地形の基本的特徴を把握した.また,低解像度の1km DEMを用いた日本列島と韓半島の地形解析を行った.後二者の成果は,研究協力者の川畑や林らとの共著として,日本地形学連合の学術誌に二つの英文論文の形で公表された.さらに,上記の解像度が異なるDEMから得られた地形量を比較することにより,DEMの解像度と把握される地形の特徴との関係を分析しつつある.これらの成果は,来年度に具体的に行う予定の後氷期開析前線の自動抽出に関する基礎的な情報として重要である.
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