研究概要 |
本年度は高解像度DEMを用いた地形解析の作業をいくつかの地域で行い,谷や流域の横断形や傾斜変換線などの微細な地形の表現力を評価し,さらには自動地形分類のためのアルゴリズム開発を行った.具体的な検討地域と作成されたDEMの空間解像度は,有珠火山(1m),草津白根火山(1m),南アルプス赤崩周辺(1m),愛知県瀬戸地域の丘陵地(5m),東京都多摩丘陵(10m),島根県浜田市東方(10m)および長野県塩尻市南西方(10m)である.これらのDEMを用いて水系と流域の抽出,水系の幾何構造と水系密度の把握,傾斜・曲率の計算,谷の横断形状の把握などを行い,各指標の相互関係を調査した.その結果,水系密度と傾斜との関係の特徴が,従来の見解とは異なり水系の発達段階を強く反映することが見いだされた.また,谷の横断面と縦断面を抽出し,その形態を統計指標に基づいて客観的に分類・解析する手法を開発した.さらに,DEMの解像度に応じて傾斜などの地形指標が,どのように変化するかを解析した.これらの知見を踏まえて,ガリー状の谷地形を自動抽出するアルゴリズムを作成した.次に,空中写真判読や野外調査によって後氷期開析前線の分布が詳しく明らかにされている塩尻市南西方の山地を対象に,ガリー状の地形と後氷期解析前線との対応関係を調べた.その結果,対応は概ね良好なことが示された.また,日本で広く入手可能な中解像度DEM(グリッド間隔50m程度)を用いて,山地の谷地形の特徴を解析し,高解像度DEMを用いた場合と結果を比較した.その結果,中解像度DEMは崩壊の反復で形成されるV字谷側壁の形成把握には非常に有用であるが,後氷期開析前線の抽出には高解像度DEMが不可欠であることが確認された.現在,得られた成果のうち未公表の内容について,論文の執筆を進めている.
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