研究概要 |
本研究は,中国大陸上における梅雨前線擾乱(降水帯)の形成・維持プロセスの解明を目的とし,(1)長江流域に多降水をもたらす擾乱の形成に関連したチベット高原東側下層に現れる低温気塊について,(2)華南に降水帯を形成する要因として熱帯アジアからの影響について,(3)降水帯の維持に関して低緯度循環と中高緯度循環との相互作用についての解析を行う.平成14年度は第2の研究目的である中国大陸南部における降水帯形成に与える低緯度(特に熱帯アジア)循環からの影響について解析を行った.循環場等の解析にあたっては良質のデイリーデータを使用する必要があることから,本研究では1998年におけるGAME-Reanalysisデータを用いて,850hPa面および500hPa面における等圧面高度場,風系場ならびに降水量の格子点値(1.25度グリッドのデータの6時間ごとの値を使用)について解析を行った. 中国大陸南部(北緯25度付近)における相対渦度の大きさが,この付近の降水量とよい関係にあることから,相対渦度の時間変化をキーとして,高度場,風系場の時間変化を追跡した.その結果,中国大陸南部において降水帯を形成するような総観場の成立には,数日のタイムラグを持ったインドシナ半島南部付近との逆相関の高度場変動が関わっていることが示された.これは,熱帯対流活動との関係を示唆するものであり,梅雨期後半に多い長江流域に降水帯が形成される際のメカニズムと全く異なっている.今後,梅雨の時間推移の中に両者を位置づけて,循環場の季節推移を考える必要がある.
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