研究概要 |
本年度,室戸岬一帯に分布する完新世石灰岩に関して,以下を明らかにした. 1.完新世石灰岩は南北約13kmの範囲に分布し,岬先端部から1.5kmの範囲に集中して分布する.それらの分布高度は,南から北へ向かって低くなる. 2.石灰岩の主な構成要素は,フジツボ,貝形虫,軟体動物,カンザシゴカイの棲管,ウニの棘,被覆性コケムシ,サンゴ,被覆性底生有孔虫,底生有孔虫,サンゴモ,イワノカワ,セメント,非石灰質砕屑物であった. 3.ポイントカウンティングの結果から,石灰岩を6つの岩型に区分した.それらは,サンゴとサンゴモが卓越する石灰岩(タイプI),サンゴモが卓越する石灰岩(タイプII),サンゴモとカンザシゴカイとフジツボが卓越する石灰岩(タイプIII),サンゴモとカンザシゴカイが卓越する石灰岩(タイプIV),被覆性コケムシと被覆性底生有孔虫が卓越する石灰岩(タイプV),軟体動物(カキ)が卓越する石灰岩(タイプVI)である. 4.エボシ岩付近の岩型の垂直方向の分布は,下から順に,タイプIの石灰岩,タイプIIの石灰岩,タイプIII,もしくはタイプIVの石灰岩の順で分布している.この石灰岩の垂直分布は古水深指標として利用可能である. 5.完新世石灰岩中には,ボトリオイダルセメントやそれが癒着し,みかけ上繊維状になったものがみられ,それらはほとんどの場合,サンゴモの葉状体下部の半閉鎖空間年限ってみられる。これらのセメントは,サンゴモの光合成時のCO2の摂取や,嫌気的環境下での有機物の分解によって同空間のアルカリ度が上昇し,その結果,炭酸カルシウムの沈着が促進されて形成されたものと推定される. 6.エボシ岩で確認された旧汀線は,南から北へ向かって緩傾斜する(10cm/1km).この他に,2つの旧汀線の存在が推定されるが,それを裏付ける完新世石灰岩の分布が限られており,今後の検討を要する.
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