これまでの調査結果(特に実験結果)の再分析から、単純な横ずれ断層運動によって河川が屈曲させられた場合、上流側の堆積と下流側の侵食が進み、河川に沿う縦断形の変形が速やかに解消されることが明らかになった。しかし、この上流側の堆積と下流側の侵食は、縦断形を連続的なものに保とうとする働きというより屈曲がダムのように働くためと考えられ、多かれ少なかれ縦ずれ成分のある実際の断層運動による河川の変形については、河川勾配と断層の横ずれ縦ずれ比との兼ね合いによって縦断形の変形解消の様子に大きな違いが出てくるのではないかと推定することが可能であった。この点を確かめるためにも、実際の断層を横切って流れる河川の計測例を増やす必要がある。今年度はこの計測のために、方位計を組み込んだ測器を開発するところから始めたのであるが、これに予想以上に手間取り、平成14年2月になってようやく一応の完成を見たばかりである。そのため、日本の河川については簡単な予察踏査しかできなかったのであるが、3月から行うアメリカ合衆国カリフォルニア州南部での現地調査において、サン・アンドレアス断層を横切る河川の計測に使用する予定である。日本の小河川と比べると計測条件がかなり良いことや断層運動自身の研究が進んでいることから、ここでの計測を初期の段階で行っておくことも重要であろう。断層による屈曲が明らかな河川についても明らかでない河川についても詳細な縦断形の計測を行い、今後の比較検討の基準としたい。
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