本研究は20世紀後半に行われた国内の水温調査結果をデータベース化し、検討を加えることにある。地球温暖化の傾向はすでに明らかであるが、これに伴い河川・湖沼など陸水の水温も上昇し、水循環形態が変化すると予測される。変化の大きさを予測し、また将来において変化を検証・評価するためには、20世紀のデータが必要になる。これらデータ整理が本研究の大きな目的である。 本年度は戦後に農林省が行った河川・ため池の水温調査報告書を整理し、データベース化に着手した。整理分類はほぼ終了し、現在一部のデータベース化に取りかかっている。これと並行して、1980年以降における自然湖沼の水温変化資料を整理中である。現在のところ、池田湖、琵琶湖、芦ノ湖、霞ヶ浦に関する資料収集が終わった。14年度には北関東、東北、北海道の深い湖沼について整理する予定である。また一部の代表的ダム湖についても、現在の水温を整理する予定である。池田湖の予察的解析では、近年冬季の不完全循環が頻発する傾向が指摘された。したがって数年にわたって深層の溶存酸素の欠乏が生じる場合が多い。琵琶湖では1985年以降深層水温が上昇傾向にあるが、これは3月の積雪深の低下と関係している。1985年以降、東北でも積雪が激減しているので、今後はこれと併せて解析する予定である。
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