研究概要 |
平成14年度は,前年度の研究をさらにすすめ,処理等による羊毛布の性能改善とその評価に関わる実験,解析をすすめた.(1)羊毛布の酵素(プロテアーゼ)処理による風合いの改良を行った.ニュージーランド国立羊毛研究所の製品加工部門主任研究員Surinder Tandon博士と北海道教育大学,森田みゆき助教授の協力を得て,同研究所から提供されたコース羊毛平編布の性能改善(とくにソフト化)について,酵素処理による力学特性の変化と柔軟剤処理による同変化のを比較検討した.酵素処理による手続きのほうが,糸断面内の繊維間間隙が増していることが観察され,(2)引張り柔らかさや表面平滑性などで酵素処理の優位な有効性が確かめられた.(3)コース羊毛織布構造の布について,酵素処理による風合い改善を行った.諸力学量から風合い換算式を用いて基本風合い値を算出し,処理後の有意性を確認した. なお,羊毛繊維は繊維中最も吸湿性が高く,精密環境条件での測定が要求される.そのため,今年度は,現有していた低温恒温恒湿室の設備改善(設備備品費の使用)を行い,特に安定した湿度条件下で測定を行なった.最近の動向として,エネルギーセーヴおよび環境配慮において,あらたに酸化チタン処理の効果が着目されているため,予備段階ではあるが今後の研究関発の重要な基礎として,採取時期を考慮したオーストラリア産羊毛繊維から,前年度に試作した試料布20種類のうち5種類について,酸化チタン坦持処理を試み,同処理の布の性能改善に及ぼす効果も確かめた.
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