研究概要 |
洗浄における汚れの除去機構を考える場合,洗浄液中の界面活性剤や洗浄補助剤による化学的作用とともに,外部から被洗物に与えられる物理的作用も重要な要因を占めている.本研究は,物理的作用のひとつである洗浄液の持つ流体力に着目したもので,界面活性剤水溶液を中心に,汚れ除去を効果的に行うためにより有効な流体力の利用方法を解明することを目的とした. 前年度は,界面活性剤水溶液の流動時の特徴をミクロな視点から解明することを試み,形成された球状ミセルが流動時と静止時ではどう変化するかを加熱せん断流動観察システムを用いて観察,比較した. 本年度は,ややマクロな視点から流動上の特徴を探る実験を行った.すなわち,単純化した矩形モデル流路を作製し,流路中心部に張られた布モデル(ポリエステルメッシュ)に各種溶液のせん断流を当て,メッシュ前後の圧損から生じた抗力を算出して比較した.今回は特に,断面の溶液通過部のトータル面積を変えた流路をいくつか作製し,通過面積が抗力に与える影響を探った.試料溶液は,イオン交換水,希薄高分子水溶液(PAA, PEO),界面活性剤水溶液(LAS, AE(23))である.本年度得られた結果は以下の通りである. 1.これまでの結果と同様,流路断面積を変えてもほぼすべての条件下で抗力はReとともに増加した.しかし,あるReに達すると抗力のみが増加し,そのままグラフが立ち上がる形状を示した. 2.すべてのメッシュで最も抗力が高かったのは希薄高分子水溶液で,ついでイオン交換水,界面活性剤水溶液は最も低かった. 3.メッシュの糸密度を比較すると,糸密度が高く単位面積あたりのオープニングエリアが小さいほど抗力も高く,より大きな抵抗を示した. 4.溶液通過部のトータル面積が小さくなるほど得られたRe範囲が高く,大きいほどRe範囲が低かった.従って,同一Reにおける抗力はトータル面積が大きいほど高く,より大きな抵抗を示した. 以上2年間の研究により,界面活性剤水溶液の流動上の特徴をミクロな視点とややマクロな視点の両方から捉えることができた.
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