従来、温熱感や湿潤感といった感覚評価は言葉で表現されることがほとんどであった。しかし、客観性や数量化が難しいなど、言葉や文字を使った表現に対する疑問や限界が問題としてあげられる。本研究では、温熱刺激(主に、衣服内温湿度)により誘起される生理-生体信号としての脳波を測定することにより、刺激と脳中枢神経系の反応との対応関係を解析し、衣服の温熱的快適性評価における客観性、数量性、非言語性を実現することを目的として行った。 今年度の成果の概要は、以下の通りである。 1.まず基礎研究として、衣服内温湿度と湿潤感覚との関係を検討した。その結果、湿潤感は温熱感よりも大きく快適感に影響を及ぼすこと、また、湿潤感は衣服内湿度と高い相関をもち、心拍数・舌下温・平均皮膚温などの生理量とも有意な相関をもつことを明らかにした。 2.衣服内湿度刺激強度に対する湿潤感の弁別閾値を明らかにした。 3.シルクプロティンの配合量、固着量が多いほど吸湿性の向上が認められ、人体・シート間湿度を低く抑える効果のあることがわかった。また、不感蒸泄および発汗シミュレーション実験において、吸湿性が大きいほど潜熱損失量が大きくなることがわかった。 4.脳波測定により、人の基本感情である喜怒哀楽のデータベース(脳機能研究所)から導出された感性指標と衣服内温湿度および主観評価との関係を明らかにした。 5.吸湿加工を施した座席シート表皮材を用いて、脳波による座り心地評価を行い、天然皮革や加エシートではレギュラーPVCレザーに比べてポジティブな感性が高くなることを明らかにした。
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