本研究は、温熱的に快適な衣料素材の開発のための支援として、衣服内温湿度刺激に対する温熱感、湿潤感の主観評価と脳波との関係を明らかにすることを目的とした。客観性、数量性に疑問のある主観評価を衣服内温湿度刺激により誘起される生理-生体信号としての脳波を測定することにより、刺激と脳中枢神経系の反応との対応関係を解析するとともに、温熱的に快適な素材およびアパレル設計のための基礎実験、応用実験を行った。 実験期間内に得られた成果の概要は、以下の通りである。 1.衣服内温湿度と温熱感、湿潤感との関係を検討し、湿潤感の衣服内湿度の刺激強度に対する見かけの弁別閾値を明らかにした。 2.感性スペクトル解析装置による電極間相互相関係数を用いた脳波解析から、刺激対脳波および主観評価対脳波との関係を明らかにすることにより、脳波測定による温熱感および湿潤感における客観評価の可能性を導いた。 3.シート表皮材の温熱特性の評価について、脳波測定による感性スペクトル解析法を適用し、喜(喜び)、怒(怒り、ストレス)、哀(悲しみ)、楽(リラックス)の各感性値を算出し、その妥当性を検証した。また、女性ファンデーション用パワーストレッチ編布およびタオル織物の温熱的特性への適用も検討すべく、基礎研究を行った。 以上、脳波測定による感性スペクトル解析法の衣料研究開発への適用の可能性を明らかにした。今後は、より的確な客観評価を確立するため、データベースの作成を行う予定である。
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