本研究は、少子高齢化の著しい現代社会における祖父母と孫の関係性に着目し、祖父母である高齢者と孫である子どもの双方から、それぞれに孫あるいは祖父母との関係性の良否およびその存在意義を問い直し、多世代の積極的共存・多世代間の自立と連帯を前提とした「世代間交流」の可能性を探るのが目的である。 本調査研究の特徴は(1)祖父母と孫との関係性の変化と連続性を明らかにする観点から小学生の孫と祖父母、中学生の孫と祖父母、高校生の孫と祖父母、大学生の孫と祖父母各世代のデータを収集することにより、孫の成長を軸に祖父母と孫との関係性の変化と連続性を検証したこと、(2)孫とその実祖父母とのカップルでデータ収集をする試みを行なったこと、(3)祖父母と孫との関係性をダイアドな関係で理解するだけではなく、親(父母)との関係性を組み込んだトライアドな関係の枠組みのなかでもとらえる試みを行なったこと、(4)祖父母と孫との関係性をポジティブな次元にとどまらず、ネガティブな次元を含めた両義的ものとして把握したことである。以上をふまえて、祖父母と孫のそれぞれの意識と関係の実態を明らかにし、高齢者の生きがいや子どもの生きる力にどのような影響を及ぼすかを検証した。 調査は平成14年7月から12月にかけて奈良県内の小学生・中学生・高校生・大学生と、孫に想定してもらった祖父または祖母一人を対象として実施し、小学生242名とその祖父母85名、中学生216名とその祖父母66名、高校生237名とその祖父母57名、大学生178名とその祖父母15名のデータを収集した。合わせると、孫873名、祖父母223名である。 主な結果として、祖父母と孫との関係性でもっとも友好的な関係は小学生の孫と祖父母であり、中・高校生の孫と祖父母の関係は祖父母の加齢に伴って相対的に悪くなり、大学生の孫と祖父母との関係になると客観的に判断できるようになってふたたび関係性が好転することが明らかとなった。
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