単繊維の形態(捲縮の度合い)をフラクタル次元で表し、その複雑さの程度を分類するための基礎データの収集を行った。単繊維試料として、捲縮ナイロンフィラメント、生糸、亜麻糸、PET捲縮糸などを蒐集した。蒐集に際しては、複雑な構造で、フラクタル次元が2に近い繊維試料と、比較的直線的で、次元が1に近く剛直なものとを選択した。これらの影像をほぼ同一倍率の縮尺として、すなわち一定画面中に占める占有面積をほぼ等しく撮って、面積の次元に対する影響を抑えて、2値化した図面を作成した。これらをCCDカメラでコンピュータに取り込み、昨年度作成したフラクタル次元解析ソフトを用いて次元解析に供した。捲縮単繊維は3次元的な形態を有するものであるが、これらを2次元的な解析をすることで、ほぼ、満足できる繊維物性との相関性が得られるものと判断した。 単繊維の次元は1.00〜2.00の範囲内にあるが、同一占有面積であっても、全体的に(マクロに)複雑な形態と全体的には直線的であるが、部分的に(ミクロに)細かい複雑な捲縮が見られる繊維がある。そこで、マクロ次元(ストラクチュアル次元)とミクロ次元(テクスチュアル次元)を設定し、(1)マクロ次元、ミクロ次元共に1.5以上(2)マクロ次元1.5以上、ミクロ次元1.5以下(3)マクロ次元1.5以下、ミクロ次元1.5以上(4)マクロ次元、ミクロ次元共に1.5以下に次元を4分類した。これらに実際の繊維を当てはめると、(1)には3次元高度捲縮ナイロンフィラメント、(2)には捲縮PETフィラメント、(3)には2次元捲縮ナイロンフィラメント、(4)には亜麻繊維が入ることが分かった。このようにして、繊維形態の分類が可能であることが判明した。
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