繊維・繊維製品実物そのものからの映像を画像解析装置に呼び込み、二値化などの画像処理をした後、自動次元解析装置でフラクタル次元を求める研究の4年目最終年度である今年度は、高分子材料なども含めて次元解析を行った。マンデルブロのフラクタル幾何学はハウスドルフ測度と次元を基礎理論として、複雑な自然の形態やCGによる図形を非整数次元で表すものであるが、被覆次元であるハウスドルフ次元はコンピュータ処理が難しく実用的ではないので、一般にハウスドルフ次元と等価な相似次元、ディバイダ次元、ボックス・カウンティング次元が用いられる。本研究ではボックス・カウンティング次元を用いて解析を進めた。フラクタルには完全自己相似集合と統計的自己相似集合があるが、繊維・繊維製品はある一部分の形態がより大きな部分または全体と似た形態である統計的自己相似集合であると見なすと、都合よく解析ができる。ボックス・カウンティング次元の大きさは繊維・繊維製品の形態の複雑さの尺度として用いることができる。 今年度集中的に研究した試料は、透湿・防水素材に用いられる多孔性ポリウレタン樹脂である。ポリウレタンは湿式コーティング法により、高密度ナイロン布に塗布して透湿・防水素材とする。樹脂層には水蒸気の透過する細孔が多数あり、その次元を測定した。次元分布は1.8660〜1.8793であった。 また、CG図の次元解析として次の操作を行った。捲縮フィラメントは完全自己相似集合である古典的なコッホ曲線でモデル化できる。コッホ曲線は長さ1の線分を三等分し、真中の一本を、その長さ(1/3)を辺長とする正三角形の他の二辺に相当する迂回路で置き換える操作を繰り返して作られる。この正規コッホ曲線の正三角形の頂角60度を変え二等辺三角形とし(修正)、次に、迂回路を設ける側を不規則にする(ランダム)と、修正ランダムコッホ曲線となる。この操作のステップ数を重ねると捲縮フィラメントのモデルとなる。このようなCG図のボックス・カウンティング次元を求め、相似次元と比較した。ボックス・カウンティング次元の次元分布は1.033〜1.310であった。
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