本研究は、繊維・繊維製品実物そのものからの映像を画像解析装置に呼び込み、自動的に次元解析を行う方法を確立すること目的とした。画像解析装置および自動次元解析装置を完成させ、研究室において各種試料の画像の解析を行い、継続的にフラクタル次元データの蓄積を続けている。 繊維は細長く可撓性のある材料で、「形態」そのものが物性よりも重視される特殊性をもつ。繊維の細長さはアスペクト比と繊維直径により数値化できるが、撓みやすい繊維が曲がりくねった形態を取った場合、その形態を数値化するためにフラクタル幾何学の理論を応用した。フラクタル幾何学は自己相似集合と非整数次元を特徴とする。 マンデルブロのフラクタル幾何学はハウスドルフ測度と次元を基礎理論として複雑な自然の形態やCGによる図形を非整数次元で表す。フラクタルには完全自己相似集合と統計的自己相似集合があるが、繊維・繊維製品は統計的自己相似集合と見なすと都合よく解析できる。フラクタル次元にはハウスドルフ次元と等価な相似次元、ディバイダ次元、ボックス・カウンティング次元があるが、コンピュータ処理に適しているのはボックス・カウンティング次元であるから、次元解析にはボックス・カウンティング法を用いた。 ボックス・カウンティング法を用いて次元測定した試料の内には次のような例がある。捲縮ナイロン6フィラメントの次元分布は1.00〜1.65であった。透湿防水素材にコーティングされた多孔性ポリウレタンドープの孔の次元分布は1.8660〜1.8793であった。曲がりくねったフィラメントモデルとして作成した修正ランダムコッホ曲線の次元分布は1.033〜1.310であった。
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