研究概要 |
本年度は、高齢者、若齢者の視覚特性との関わりから、色彩と光源の種類・室内照度を変化要因として取り上げた心理評価実験を行い、室内色彩計画上の基礎資料を得ることを目的とした。 高齢者、若齢者の視覚の状態を知るため,100HUEテストを実施した。また、評価実験にはSD法を使用し、評価対象として、光源の色温度3種類(3000K、5000K、6700K)とし、机上面照度を3段階(2000lx、1000lx、150lx)とした。対象色票は高齢者の特徴として若齢者よりも彩度の変化が捉えにくいこと、室内の壁面色彩の明度の変化が温冷感に関わることなどが既往の研究からわかっていることから、それらの変化による色彩の心理的な影響を捉えるため、色相YR、Bを中心に14色票を選定した。 高齢者の100HUEテストの結果から、色温度の高い光源ほど色彩の誤認が少ないこと、また照度は3段階のみのテストであるが,1000,2000lxの場合ではほとんど誤認の程度は変わらず、150lxの場合には色彩の誤認がかなり増えることがわかった。 評価実験データから因子分析を行った結果、室のイメージに寄与する因子として、高齢者には第1因子価値、第2因子活動性が、若齢者には第1因子活動性、第2因子価値、第3因子柔らかさの各因子が析出された。若齢者については、既往の研究とほぼ同様の因子が得られたが、高齢者の場合、価値因子に負荷量の高い項目には力量性に関わりの深い項目が見られた。また、若齢者では「柔らかな」と「暖かい」という評価に正の相関が見られるのに対し、高齢者の場合、「柔らかな」と「涼しい」という評価に正の相関が見られ、興味深い結果が得られた。
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