昨年度は、高齢者と若齢者の色彩の感情効果について検討した。それにより、高齢者の場合、価値評価には色彩の明度が大きく影響し、明度の高い色彩が好まれることが明らかとなった。そこで本年度は、実空間において床の色彩とソファの色彩を取り上げ、高齢者および若齢者を被験者とした評価実験を行い、高齢者、若齢者ともに快適な空間計画についての基礎資料を得ることを目的とした。 評価実験にはSD法を使用し、評価対象として、床面、ソファの明度と色相、光源の色温度(昼白色(5000K)、電球色(3000K)三波長域発光形蛍光ランプ)の組み合わせ合計28対象とした。実験室は1.8m×2.4m×2.1mの実空間であり、室内の照度(床から70cmの高さ)は、一般的な家庭の居間の平均照度に近い150lxである。 被験者は、高齢者20名(平均年齢74歳)、若齢者8名である。 実験の結果、高齢者に好まれ、若齢者の評価と差があるのは、明度の高いPB系の色彩が含まれる組み合わせであった。若齢者の場合は、明るさや華やかさが好みと関わらないのに対し、高齢者の場合には、明るく華やかな空間が好まれ、明度の低い組み合わせは好まれないことが明らかとなった。また、同一・類似色相、同一・類似色調配色は高齢者には好まれないという結果を得た。 これまで、高齢者には落ち着いた木肌色で構成された和の空間が好まれるとされてきたが、色彩として好まれる明度の高い色彩は空間の内装色としても好まれることが明らかとなり、必ずしも和の空間が好まれるとは言えないという結果となった。
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