研究概要 |
1)シクロデキストリンによるベンジリデン型誘導体及びポルフィリン誘導体の包接作用…まず最初にシクロデキストリン(CD)の包接機能の解明のために、ベンジリデン型誘導体及びポルフィリン誘導体とα-CD、β-CD、及びγ-CDとの相互作用を検討した。ベンジリデン誘導体との結合定数を求めたところすべての系においてベンジリデンの側鎖の疎水性が増加するにつれてその結合定数は増加した。また、ポルフィリン誘導体の場合、最も高い結合定数が得られたのは、β-CDで、次にγ-CD、α-CDの順であった。このように3種のCD間で結合定数に差が生じたのは、β-CDが3種の内で最も適切な内孔を持ち、そこへ基質がちょうどフィットしたためと考えられる。これらの結果を、分子モデル計算によりさらに詳細に検討した。 2)シクロデキストリン誘導体とビスフェノールAとの相互作用…環境ホルモンの1種であるビスフェノールAとCD誘導体との相互作用を検討した。25℃での結合定数を求めたところ、上記同様に、β-CDにおいて最も高い値が得られた。さらに、今後各温度変化の条件下での結合定数を求め、熱力学関数を算出し、種々の条件下でのCDの包接機能の基礎的データーを得ると共に、生体レセプターモデルとしてのシクロデキストリンの役割を考察する予定である。 3)シクロデキストリン誘導体による包接作用の分子モデル計算…上記の実験結果をさらに詳細に検討するため,ビスフェノールAとレセプターモデルとしてのCDとの相互作用の理論計算によるアプローチを一部試みた。具体的には、適合可能な安定コンホメーションを選出すると共に、各複合体を作成し、分子力学計算プログラムで極小化を試み、複合体形成における安定構造を探求した。今後これらの得られた安定エネルギーの結果から,ビスフェノールAがどのようにCDに結合されるかを推定し、実験から得られた結合定数との相関関係を明らかにする予定である。
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