研究概要 |
平成15年度は,上記の研究種目・研究課題の科学研究費補助金交付3年目で終了年度でもあり,次のような研究活動に取り組んだ. 1.研究対象の村があるタイ国チェンマイ県およびバンコクに平成15年8月1日〜21日の間に出張し,現地調査を実施した.当該の村は電化後7年目にあたるが,当初の計画にしたがってまず毎年実施してきた調査項目,すなわち全住民名簿の整備,生活時間,耐久消費財・生産財の保有状況等について調査した.さらに,本プロジェクト3年目に実施する予定の伝統・習慣,性役割,村落共同体の構造など比較的緩慢に変容する要因に関する調査をおこなった.得られたデータをエスノグラフィカルな分析方法を駆使して,諸要因の相互作用とダイナミズムを検討・解析した. 2.最近,生活水準向上を目的として収入増加を図るため出稼ぎが急増し,さらに高学歴指向が広まり就学のために都会に出る者が増加しているが家族関係の面では家族の絆は相変らず強いことが判明した.一方,生活構造面では各生活要素で商品経済化が進展し,従来家庭内あるいは村の内部で賄っていた衣食住に必要な物品やサービスを外部に依存する傾向が進展している. 3.さらにこの村で生産された農作物はチェンマイにある農産物会社により買い上げられ,日本に輸出されるようになり,また,村人の中から日本に嫁に来るものもでてきた.他方,日系企業が製造する電気器具,車両,食品・日用品等の購入が高まっており,現地と日本の関係が深まりつつある. 4.これらの分析結果については,日本社会情報学会,日本家政学会の機関誌で発表をおこない,大妻女子大学家政系紀要にも資料として掲載した.さらに,アジア地区家政学会(タイ国チェンマイで開催)も口頭・ポスター発表した. 5.要約をタイ語に翻訳し,当該地域を統括するチェンマイ県およびメーホンソン県の教育事務所長等に配布し現地の政策立案に資した.
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