加齢により身体機能が低下していく高齢者の住生活の実状とその問題点を明らかにすることが、本年度の研究の目的である。 本年度はその目的に対応するべく、東京都内の憩いの家及び住宅支援センターに通う一般住宅に居住する65才以上の高齢者を対象とする調査を実施した。まず一般的に用いられている高齢者の分類である前期・後期高齢者による住生活の実態及び意識の違いを明らかにすることを試みた。今回の調査対象者の場合(382人)年齢的には65才から85才以上まで広範囲にわたっているが、身体的には健康である、無理は利かないが健康であるとするものが多く、生活の仕方、考え方には大きな違いはないことが明らかになった。さらに全体的に、高齢者の住生活及びその意識に違いを生じさせる要因(住宅の形態、男女の違い、家族構成、健康状態など)について一部ではあるが分析を試み、属性や住宅と相互に影響を受けるということを明らかにすることができた。 一方車椅子使用者については、身体機能に障害を有するものであるが(調査可能者の制約により高齢者はできなかった)、上記とほぼ同様の調査(事例調査27人)を実施した。但しこの調査では当事者だけでなく介助者である家族員の住生活についても調査し、両者の住生活における問題を明らかにすることを試みた。比較的若い対象者であったことから、日常の生活及び住生活に対する意識は、家族員ともに健常者との違いはほとんどみられない、また介助という意識があまりないというのが実状である。なお今年度は、これら2つの調査及び集計に多くの時間を費やしたため、大まかな傾向しかとらえられていない。したがって現在、高齢者の特性により対象者をグループ化し、そのグループ間の特徴の分析及びその要因の抽出を継続、実施している。
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