今日高齢社会への突入により、身体機能が低下し、車いすなどによる生活をせざる負えない高齢者も増加している。これら高齢者(障害者)のための住宅政策が種々展開しているが、高齢者(障害者)にとって快適な空間が提供され、実際に居住者は快適な生活をしているのであろうか。本研究は、このように加齢により身体機能が低下していく高齢者(障害者)の住生活の実状とその問題点を明らかにし、高齢者対応住宅やケア住宅への指針の妥当性のための資料を提供することを目的としている。 なお本研究は2つの調査から構成されている。一つは一般住宅に居住し、高齢者センターあるいは住宅支援センターに通う65歳以上の高齢者を対象としたものであり、もう一つは脊椎損傷による車いす使用者(平均年齢34.4歳、身体状況の制約により高齢者はできなかった)を対象とした調査である。 本研究では身体機能の低下による差異を明らかにすることを主眼としていることから、前者では足腰の状態を一指標として分析を試みた。その結果、現在高齢者が居住している住宅は、必ずしも高齢化対応しているとは限らず、しかも足腰の状態では、問題のないグループの方が問題のあるグループより住宅改善をしている。住生活(部)では家事作業については、足腰の状態にかかわらず高齢者自身で対応していかねばならない生活であること、介助が必要、また不安になった時の希望や子供との住まい方に対しても、身体状況によりそれぞれ特性があることを明らかにした。一方後者からは、生活環境や就労、家族を含めた生活条件が整えば(例えば家族の在宅状況に左右されずに外出できる、おこなわざるを得ない行為は、少ない負担で独力でおこなえる空間の提供-ワンルーム的空間を)、車いす使用者であっても地域で自立した生活をすることの可能性は高いことを確認した。
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