本研究は、一般の住宅に居住する特性の異なる高齢者が、実際どのような住生活を送っているのか、またどういった住意識を持って生活しているかを、特に加齢、身体機能の低下などにより生ずるであろうその差異を明らかにし、高齢者それぞれにとって望ましい住宅計画への一資料を得ることを目的におこなったものである。 第1部では、加齢により身体機能が低下しつつある高齢者の住生活の実状と住意識について明らかにすることを試みている。高齢に対し改善が実施されている住宅は少なく、相当貧弱であるが、その現状に満足しているものが多いのが実態である。高齢者の住生活はかなり規則的に、自立しておこなう傾向にあるが、足腰の状態や年齢により、影響を受けることが明らかになった。一方、高齢者の住宅や住生活に対する考え方は、年齢や足腰の状態による違いはほとんどみられない。しかし居住するであろう高齢者の年齢、身体機能の状態などによる特性を配慮して住宅計画することが必要であることを、再確認した。 第2部では、車いす使用者及びその介助者を対象として、車いす使用者家庭の住生活の実態と車いす使用者を巡る介助者の実態を明らかにすることを意図している。今回の調査対象者である車いす使用者は、脊椎損傷による疾患で、日常的に車いすを使用しているものであるが(高齢者は調査できなかった)、車いす操作能力も高く、日常的にもスポーツをするなど、身体的能力が高いものが多い。したがって日常生活も自立しておこなえる若い者が多いのが特徴である。住宅内で実施している生活行為は、健常者と変わらないが、地域活動への参加や炊事を初めとする家事作業などの行為を実施しているものは少ない。車いす使用者家庭の住居は、車いす使用者の生活のために何らかの住宅改善をすでに実施していること、自立した生活をしているものが多かったことなどから、介助されている、介助しているという意識はお互いに低いのが実状である。
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