研究概要 |
本研究では主観的な衣服のあいまいな着心地を客観的に定量化するための方法を確立することを目的としている。すなわち、リモートセンシング技術を用いた着心地のダイナミックスな計測法の確立と評価システムの開発を行い、それによる衣服内環境の長期的な連続モニタリングによるデータの収集、解析後、それらの情報を着心地情報に変換し、衣服の着用者に着心地改善のための必要な情報を発信する。 昨年度は、応答性の高い湿度センサーの開発および改良を行い、日常生活における衣服内環境の連続的な変化の計測の可能の検討と、リモートモニタリングシステムについて検討した。今年度は、これらの計測法により、衣服の通気抵抗を変化させた場合の衣服内温湿度を連続モニタリングし、着衣量や環境気温の変化に伴う衣服内環境の変動について検討した。室内における生活行動として被験者に、椅座位での日常的な会話を行わせ(精神的な活動)、地階から4階まで階段を昇らせ(身体活動)、その後室内にて椅座位安静を行わせた。このときに、通気抵抗の異なる袖無しのシャツ型の衣服(A;ダブルコード無地0.007kPa・s/m, B;8コースメッシュ0.045kPa・s/m,綿56.8%ポリエステル43.2%)を着用し、衣服内上腹部と外気の温・湿度について、1分間隔で連続的にモニタリングした。このとき、湿度変化に対して時定数の異なる2種の携帯用温湿度センサー(A;時定数19秒,B;時定数0.6秒)により計測を行った。夏季における建物内にて実施したモニタリング例では、着用衣服の通気抵抗の大小に関わらず、またいずれのセンサーを用いた計測でも、発汗が促される外気における衣服内環境の相対湿度は精神的な活動・運動を伴う身体活動により変動した。より正確に衣服内環境の動的な湿度変化を捉えるためには、時定数の小さいセンサーを用いる必要があることがわかった。
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