本研究は水環境に負荷を掛けない洗浄システムの開発研究として、洗濯水に着目し、洗剤を最小限にした系での除去効果と洗濯排水の水環境への負荷軽減の両面から検討した。 1.家庭洗濯の実態調査: 家庭における洗濯行動が水環境に及ぼす影響をどの程度消費者が理解し、行動しているか。この点について調べるため、県内の主婦、学生を対象に洗濯に関する実態調査を行ったところ、洗剤や洗濯水が水環境に影響を及ぼすことは知っているが、実際の行動には必ずしも結びついていないことがわかった。このことから、消費者への環境教育が重要である。 2.各洗浄液の洗浄性: 洗剤を減量化することによって水環境への負荷を軽減することができるので、水本来の機能性を活用した洗浄方法に着目した。すなわち、ここでは水を電気分解して得られる強酸性電解水、強アルカリ性電解水を使用して、JISで規定する湿式人工汚染布の洗浄性を調べた。20℃と40℃とで比較すると、強アルカリ電離水で洗浄した場合、20℃でも洗剤の添加系に近い除去効果を得た。さらに、界面活性剤として生分解性の高いSDSやスルホン変性ポリビニルアルコール(S-PVA)との共存系で調べたところ、洗剤濃度が通常の標準濃度の半分程度で効果を得ることができた。従って、機能水を組み合わせた洗浄方法は衣料用洗剤の少量化に繋がることが認められた。 3.洗濯排水の汚染性: 洗濯廃液の汚染度をCOD法で定量したところ、洗剤ゼロコースでの汚濁度は19.7mg/l、標準洗剤量では、29.4mg/l、機能水では14.2mg/lとなり、水質汚濁量は洗剤量と対応していることがわかった。 以上から、機能水が衣類の洗濯にどの程度活用できるか、基礎的なレベルでの検討を行ったところ、界面活性剤の減量が可能であることがわかった。また、水汚濁の軽減も可能であることがわかったので、今後は、繊維素材に損傷を与えない洗浄条件について検討を進める予定である。
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