本研究は、人体と着衣との間に形成される空隙量を定量的にとらえる方法を検討することを目的とした。静止状態における人体と着衣との間に形成される空隙量については、近年開発された3D-digitizerを用いて定量的にとらえる方法を検討した。また、歩行動作や風を受けることによって揺動する着衣の空隙量の変化については、本研究のために考案して製作した揺動着衣空隙量測定装置を用いて検討した。そして、着衣空隙量の動作的・温熱的性能については、青年女子2名を被験者として着用実験により評価した。なお、実験用着衣は、ゆとり量の異なる3種のパンツと3種のブラウスとした。得られた結果は以下のようである。 3D-digitizerによる大腿部周長の測定誤差は、スライディングゲージ法よりも小さいことが確認され、3D-digitizeは空隙量測定法として有用であるといえる。 静止状態にある着衣の空隙容積とパターン面積との間には、1%の有意水準で相関関係が認められた。したがって、パターン面積がわかれば着衣に形成される空隙量を推定することができる。 着衣の空隙量は歩行や風によって変動し、静止状態よりも減少することが明らかになった。風による着衣の揺動は、布の通気性および剛軟性によって3パターンに大別され、剛軟度が小さく通気度の大きな布は、空隙面積の変化が大きい。また、剛軟度の大きな布は有風下でも布の形状は比較的安定していることが把握できた。 上肢上挙動作時における着衣による身体圧迫感は、空隙量が最も多い着衣において小さいと評価された。温熱的快適性は、日常的な空隙量の着衣において、高い評価が得られた。
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