研究概要 |
昨年度の研究成果から、高感性複合布用としてスパンレース不織布が最適であることが確認された。今年度は昨年度の研究の成果を踏まえ、絹スパンレース不織布を主要部材とする多積層複合不織布を試作し、その細孔構造や物理的性能に及ぼす複合部材の影響や耐洗濯性について検討すると共に研究のまとめを行った。絹スパンレース不織布を表面層とし、吸水層としてレーヨン繊維とアクリル繊維を50:50の比率で混綿したウエブ、強化層としてレーヨン100%の砥粒加工のメッシュ層を複合部材とする多積層複合不織布を設計し、各複合部材が複合不織布の構造や物理的性能に及ぼす影響について体系的に製造条件を変えて試料を試作し実験的に調べた。また、ポリエステル繊維不織布を表面層にした場合との比較検討も行った。その結果、絹スパンレース不織布を表面層とすることにより、KES法による測定結果において、剪断変形からの回復性がよくなり、圧縮からの回復性も向上すると共に、表面特性のMIU値、SMD値も小さくなり高感性複合布として使用できる可能性を見出した。また、通気抵抗は大きくなり、保温性も向上する結果を得た。耐洗濯性に関しては、絹複合布に後加工を施し、洗濯回数を0,1,5,10,20,30回として複合不織布の構造・形状、力学的性質、吸水性、通気性の洗濯による変化を調べた。細孔径分布のピーク値は洗濯により徐々に高ミクロン側へ移動し、繊維間の空隙が大きくなり、また、洗濯回数はKES法による引張り特性、曲げ特性、剪断特性、圧縮特性、表面特性の各特性値に大きな影響を及ぼし、洗濯回数が増加するに伴い、引張り仕事量、圧縮仕事量は増加し、曲げ剛性、剪断剛性、引っ張り強さは減少した。洗濯20回後に通気抵抗は急激に低下した。外観、風合い、力学的特性なども考慮して総合的に判断すれば今回の試料では洗濯20回が限度であると考えられる。したがって、洗濯耐久性に優れた絹不織布による高感性複合布の製造にはさらに適した後加工の検討を進めなければならないことが分かった。
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