研究概要 |
近年、エイズウイルスやB型及びC型肝炎感染者等を扱う医療行為現場においては、これらの病原体によって医療従事者が脅威にさらされており、高性能の防護衣料の開発が望まれている。病院での手術衣に関するアンケート調査の結果、(1)使い捨てガウンへの移行は1990年代に顕著になり、現在、使い捨てガウンのみを使用している病院は全体の約53%にも達して、その他は洗浄・滅菌により繰り返し使用のガウンを併用し、繰り返し使用のガウンのみ利用している病院はない。(2)今後、すべてのガウンを使い捨てガウンに移行していきたいという考えが多数見受けられた。(3)使い捨てガウンは撥水性が高く、発塵性は低い。また、その廃棄方法からも感染の機会を与えないなど安全性が高いと認識されているがその具体的な性能の評価はなく、血液等をはじいてこぼれ落ちたり多量の出血の場合や長時間の手術では血液等の透過がみられるなどの問題点も指摘されていた。(4)防護性を高めると通気性や蒸れ感・べとつき感などを含む全体の着心地が低下するので、これらの性能改善にも期待が寄せられていることがわかった。 ASTM F1670試験装置を用いて、市販の手術用ガウンの撥水性不織布2種と合成繊維織布2種の人工血液透過抵抗試験を行った結果、いずれも基準値2psi(13.8kPa/cm^2)に達しなかった。血液透過時の圧力や加圧速度と透過現象の関係を精度良く調べるために、加圧速度を自動制御できる装置を、ASTM F1670装置に準じて自作した。本装置はASTM法での最大圧力13.8kPaに達するまでの時間を1〜60秒まで可変・設定することができる。また、人工血液が接する試料布面の直径が20,30,40,57mmとなる4つのセルとその付属部品をテフロン等の加工により製作したので、今後、これらの影響を多くの試料布を用いて検討していく予定である。
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