本研究の目的は防護衣料として手術用ガウンをとりあげ、その防護機能評価として血液透過抵抗性を測定し、高機能性防護衣料の開発に繋げようとするものである。はじめに医学史や織物の歴史のなかから、医者と衣服の関わりを探った。今日では医療用不織布が脚光を浴びているが、手術用ガウンの着用実態調査を全国の病院に対して行った結果、(1)洗浄・滅菌により繰返し使用のガウンのみを用いている病院はなく、使い捨てガウンのみを使用している病院は全体の半数を超えていた。(2)使い捨てガウンは撥水性が高く、発塵性は低く、防護性能が高いという利点があるが、血液等をはじいてこぼれ落ちたり多量出血の場合や長時間の手術では血液の透過がみられるなどの問題点がある。(3)防護性能を高めると通気性や着心地が低下するので、これらの性能改善に期待が寄せられていた。しかしながら防護性能等については明確な数値を指摘した回答はなかった。 そこで防護性能評価のために、ASTM F1670に準じて自動加圧制御装置を備えた血液透過抵抗測定装置を新規に開発した。比例弁は制御装置によってその2次圧を所定の圧力に制御するように作動し、2つの圧力計はともにデジタル式とした。レギュレータと比例弁の調整により、ATSM法での最大圧力2psi(13.8kPa/cm^2)に達するまでの時間を1〜60秒まで可変・設定できるようにした。本装置を用いて13種類の手術用ガウン布の人工血液透過抵抗を測定した。その結果、13.8kPa/cm^2の圧力に耐えられた試験布は3種類であった。本実験においては圧力上昇速度をATSM法に準じて3.5kPa/secで行ったが、血液透過が精度よく判断できる速度で行う必要がある。その点で本装置は非常に有用であり、今後、布の物理構造特性と血液透過抵抗性能との関係を追及し、さらに高防護性能の手術衣の開発をめざすとともに、着心地の改善を求めていく予定である。
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