中年期と高齢期の友人ネットワークの差異をもたらす要因について、先行研究を検討した。そして、検討結果にもとづき、次年度に実施予定の質問紙調査の分析枠組みを設定し、仮説を提示した。 これまでの実証研究では、年齢が友人ネットワークに及ぼす効果を、おもに加齢効果とコーホート効果に分類してきた。さらに、加齢効果をもたらす要因を、社会的要因と生理的要因に分類してきた。社会的要因とは加齢に伴う社会的役割の変化であり、生理的要因は加齢に伴う身体能力やパーソナリティなどの生理的変化である。従来の実証研究を振り返ると、中年期と高齢期の友人ネットワークの差異を説明する論理として最も頻繁に採用されてきたのは加齢効果であり、年齢による友人ネットワークの構造と機能の差異は、加齢に伴う身体能力の変化と社会的役割の変化によってアドホックに説明されることが多かった。 これまでの年齢と友人ネットワークの実証研究の問題点としては、年齢がふくむ時間の経過の効果に対する関心が希薄であった点が挙げられる。すでに、高齢者は、中年者よりも、友人関係の継続時間が長いという知見が得られているが、そのような継続時間の長さが、友人ネットワークの構造と機能に及ぼす影響は明らかにされていない。 そこで、本研究では、中年期と高齢期の友人ネットワークの差異を分析するために、加齢とコーホートの効果に加えて、継続時間の効果を組み込んだ分析枠組みを設定した。そして、それぞれの要因が友人ネットワークの構造と機能に及ぼす効果についての仮説を設定した。
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