ふなずし熟成過程における成分の経時的変化について分析を行い、飯と魚との間の栄養成分の移動と消長について検討を行った。あわせて、微生物相の変化について検討した。また、魚の鮮度に関する成分を経時的に測定し、魚としての品質についても明らかにするとともに、食品の機能性の中から、抗酸化性に着目し、その有無の検討を行った。その結果、水分は魚肉・卵巣において徐々に減少したタンパク質は魚肉においてわずかに減少したが、飯においてはわずかに増加した。脂質は個体差が大きく、魚肉、卵巣での変化は明確でなかったが、飯ではわずかに増加した。灰分は魚肉と卵巣においては共に少し、飯では増加する現象が見られ、特に塩漬けふなから1ヶ月めの試料において、ふなから飯への移行が顕著に見られた。総アミノ酸量は魚肉・卵巣・飯のいずれにおいても増加が見られた。また、魚肉中の細菌の生菌数は本漬け後、1ヶ月で10^7オーダーまで大きく増加し、乳酸菌および嫌気性細菌はその後10^8オーダーまで達し、好気性細菌は10^4まで減少した。米飯中の乳酸菌および嫌気性細菌の生菌数は本漬け後、10^8オーダーでありその後の増減の傾向は魚肉と類似していた。また、すべての期間において、米飯中の生菌数は魚肉中の生菌数よりも1オーダー高かった。熟成期間中に観察された乳酸菌はヘテロ発酵型のLactobacillus buchneriであった。鮮度の指標である揮発性塩基窒素は、塩漬けふなでは19mg%、3ヶ月で39mg%となり、その後大きな変化は見られなかった。また、もう一つの指標としてK値の分析を行った。その結果、ふなずし熟成中において、本漬け後1ヶ月で漁の旨味成分の一つであるイノシン酸はほとんど分解していることが明らかとなった。ふなずしの水溶性画分およびメタノール画分について、DPPHラジカル消去能を指標とし、抗酸化性について測定したが、いずれの画分にも抗酸化性は見られなかった。
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