高齢化社会を迎え、生活習慣が原因で起こるいわゆる生活習慣病の予防は、現在の最重要課題である。生活習慣病としては、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症等があげられるが、骨粗鬆症に代表される骨量減少も又生活習慣病の1つと考えられる。どのような生活習慣、特に食習慣が、どのように骨に影響するのか。本年度は、近年の食の特徴であり、特に女性に関して問題となりつつあるダイエット、体重減少の骨に対する作用を調べた。 ラットを1日あるいは2日絶食させると、体重は5〜10%減少した。体重が約5%減少した、血清中の骨形成の生化学的マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性は、正常ラット(対照群)の70%に減少し、骨吸収マーカーである酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性は、1.3倍に上昇した。大腿骨のALP活性も、対照群の80%に減少した。大腿骨の重量、TRAP活性・カルシウム量、ヒドロキシプロリン量(骨コラーゲン量)は対照群との差異がなかった。体重が10%減少した時、血清中のALP活性は、対照群の50%とさらに減少し、TRAP活性は1.5倍に有意に増加した。大腿骨のALP活性は、対照群の75%に減少し、TRAP活性は1.6倍に増加した。ALP活性の減少とTRAP活性の上昇に伴って、大腿骨のカルシウム量は対照群80%に減少し、大腿骨の中央部の太さも有意に減少した。即ち、5%の体重減少で既に、骨形成能の低下を引き起こし、さらに10%の体重減少は、骨形成活性の低下とともに骨吸収活性の上昇をもたらし、その結果、骨のカルシウム量の低下をおこすことが、明らかになった。この実験結果は、近年の女性の「やせ志向」から一般に広く行われているダイエットは、骨に対して極めて危険である事を示すものである。
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