高齢化社会を迎え、生活習慣がその発症と進行に深くかかわっている生活習慣病の予防は、現在の日本が解決しなければならない最重要課題である。生活習慣病としては、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症等があげられるが、骨粗鬆症に代表される骨量減少もまた、生活習慣病の1つと考えられる。寝たきりの要介護の原因の2番目は骨折によるものであることが知られている。どのような生活習慣病、特に食習慣が、どのように骨に影響するのか。 本研究では、ラットを用いて、(1)ダイエットの骨に対する影響、(2)飲酒の骨に対する影響、(3)ビタミンC(V.C)欠乏の骨に与える影響、及び(4)V.C欠乏時における破骨細胞数の変化と破骨細胞への分化、破骨細胞形成抑制因子osteoprotegerinの発現を調べた。さらに、種々の骨代謝に影響する因子をマウスの骨を用いた培養によって評価する試みとして(5)マウス骨組織培養系による骨代謝影響因子の評価の実験を行った。 その結果、(1)約5%の体重減少は、骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)活性の低下をもたらし、10%の体重減少はさらに骨吸収マーカーである酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性の増加をもたらし、骨減少を引き起こした。(2)エタノールはALP活性を減少させ、骨形成活性の阻害によって骨のカルシウム量の減少をもたらした。(3)V.C欠乏は、その初期においてTRAP活性を上昇し骨吸収を増加し、その後ALP活性の低下、骨形成の減少をもたらした。(4)V.C欠乏初期のTRAP活性の上昇は、破骨細胞の増加によるものであった。この破骨細胞の増加は、骨髄細胞のosteoclastogenesisの増加であり、osteoprotegerin発現の減少が認められた。(5)マウスの骨組織を用いた骨代謝影響因子の評価は、動物実験と培養細胞の欠点を補うものとして有効なアッセイ系であると考えられた。
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