近年、若い女性の間では必要以上のやせ願望があり、ダイエットをする傾向が多くみられる。妊娠期、授乳期の食餌制限と、食餌中のタンパク質の違いが、母体と子の発育にどのような影響を及ぼすかについて、ラットを用いて明らかにすることを目的とした。 タンパク質源としてカゼインと分離大豆タンパク質(SPI)を用いた。12週齢のWistar系ラットを、妊娠確認後4群に分けた。カゼイン20%食自由摂取群(C群)、C群摂取量の30%制限群(CR群)、SPI20%食自由摂取群(S群)、S群摂取量の30%制限群(SR群)とし、各々の食餌を妊娠期・授乳期を通じて6週間投与した。得られた結果は以下のとおりである。 妊娠期のみに食餌量を30%制限した場合、制限群において母体の体重増加量が低下したが、新生子ではSPI食の場合にのみ、制限群の発育が低下した。このことより、妊娠期では、タンパク質の質を考慮した食餌制限であれば、母子への影響は少ない。引き続き授乳期に30%制限を行った場合には、母体と離乳子への影響が大きくみられた。摂取タンパク質の違いによる差は、自由摂取の場合でもみられ、食餌制限により、一層顕著になった。すなわち、母体の肝臓中総DNA量が、SR群ではCR群より有意に低下し、離乳子の体重、臓器重量は、S群がC群より有意に低くなった。母乳の成分は、制限群がタンパク質濃度では高く、逆に水分では低い値を示した。このことより、妊娠期、授乳期にダイエットと並行して大豆製品のみをタンパク源とすることは、子の発育の遅れ、学習能力への影響が考えられる。特に授乳期においては、動物性タンパク質比率50%を目安に摂取することが必要である。
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