(1)O157汚染野菜の作製と殺菌方法評価実験系の確立:食材には多数の雑菌による汚染があり、その中からO157だけを識別するのは容易ではない。そこで、本研究ではオワンクラゲの緑色蛍光タンパク遺伝子を組み込んだプラスミドを用いてO157を形質転換した。本菌の懸濁浮遊液にレタスを浸漬することで人為的に汚染させることができ、また本菌のコロニーは紫外線照射下で蛍光を発するため、雑菌が混在する試料においてもO157の菌数を正確に識別計数できた。(2)化学的非加熱殺菌法の検討:前記の実験系で種々の薬剤処理による消毒効果を検討した結果、貝殻焼成カルシウム溶液が、強い殺菌活性を示した。接種菌の一部は薬剤が到達しにくいレタス組織内部に侵入しているらしく、短時間で完全に殺滅することはできなかったが、処理後のレタスを低温で保存すると8-24時間でO157を殺滅できた。(3)O157抑制菌:生物学的な制菌方法の一つとして、O157抑制活性を有する菌を分離・利用しようとした。人糞便からは検出されたものの食品の常在菌からは見つからなかった。(4)物理学的非加熱殺菌法の検討:大腸菌を懸濁させた蒸留水を、高電圧のパルスパワー放電装置中へ噴霧することで大腸菌を殺滅することができた。放電により生じたフリーラジカルが殺菌していると推察されるので、レタス内部でラジカルを発生させられれば、レタス組織内に侵入したO157にも有効と考えたが、本実験を担当していた研究分担者が研究期間中に急逝し、実験を断念した。
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