本研究は、食品に含まれる抗酸化物質の調理条件下における消長と変化を追跡し挙動を明らかにすることを目的としている。香辛料のカレーリーフとショウガを研究対象とした。リノール酸メチルを10%含む基質油にカレーリーフを0.1〜1%添加し110℃で加熱したところ、0.1%添加の場合でも基質油の酸化誘導期を延長し、カレーリーフが加熱調理において抗酸化性を示すことが示唆された。カレーリーフを溶媒抽出して精製し6種の化合物を単離した。機器分析の結果、単離物質はいずれもカルバゾール骨格を有することが判明した。このうちカルバゾール骨格上に水酸基を有する3種はすべて強い抗酸化性を示した。とくに主成分のmahanineに強い活性を認めたので、本物質の加熱酸化過程における挙動を追跡した。その結果、mahanineは徐々に減少し完全に消失した直後から油の酸化が急激に進行することがわかった。酸化過程で顕著に増加するmahanine由来の物質の生成は認められず、mahanineは高温下でも安定で直接油脂の酸化を遅延しているものと推察された。次に、ショウガの調理操作による抗酸化性の変化を主要抗酸化物質である[6]-gingerolを指標に追跡した。おろしたショウガを40メッシュの濾し器でショウガ汁と残渣に分けたとき、ショウガ汁の抗酸化力はもとのおろしショウガの約3分の2であり、[6]-gingerolも約3分の2がショウガ汁に分布していた。おろしショウガの抗酸化性は24時間室温で放置すると有意に低下したが、[6]-gingerol量には有意な変化は認められず、時間の経過とともに[6]-gingerol以外の抗酸化成分が減少しているものと推察した。ショウガのみじん切りの妙め実験では、3分間の妙め操作でショウガは加熱前と同じ抗酸化力を維持しており、[6]-gingerol量にも変化がなかった。したがって、短時間の乾式加熱調理では[6]-gingerolは安定で抗酸化性は十分に維持されることが明らかとなった。
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