研究概要 |
有酸素運動トレーニングとn-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取について健康な被験者を対象に介入実験を行い,食事調査,各種生理学的,及び生化学的バイオマーカーへの影響を検討した.被験者は若年成人女性54人で,運動群と非運動対照群に分け,実験は3シリーズ行った.運動群には有酸素トレーニングを負荷すると共に,両群に対し第一シリーズでは主としてα-リノレン酸を含有するしそ油を,第二,第三シリーズでは市販健康食品のEPA剤を摂取させた.第三シリーズでは運動群には激しいトレーニングを日常行っている学生を用いた.実験期間は1週間の予備期間の後,3-4週間運動トレーニングとPUFA含有食品摂取を行った.血中トリグリセリド値や血糖値の低下傾向が見られたが,総コレステロール値には変化は見られなかった.一方,過酸化脂質値はPUFA摂取に伴い上昇する傾向が認められたが,運動群ではそれが抑制される傾向が観察され,特にこれはスポーツ競技群で大きかった.これらの効果はPUFAの摂取量に依存していた.PUFA含有食品の摂取によって,最大酸素摂取量や無酸素作業閾値などに有酸素トレーニングと同様の有意な促進効果が認められた.しかしその効果の大きさや介入終了後の持続性は,有酸素トレーニングの場合に比べ小さかった.PUFA含有食品の摂取により血漿ビタミンC濃度の低下が見られたが,低下の程度は運動群の方に顕著であった.日常高強度の運動トレーニングを行っている群は摂取したPUFAによる血中PUFAの上昇効果が見られなかった.非運動群とスポーツ競技者群とに対して行ったEPA剤投与により有意な呼気中アセトン濃度の低下が認められた.これらの結果は,ビタミンCの十分な摂取を中心とした食事上の配慮を行えば,有酸素運動トレーニングとn-3系PUFA摂取の併用によって生活習慣病のリスク低減への有効性が期待できることを示唆する.
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