<目的・方法>日本の近世・近代における日常食と饗応食の構造的特徴を明らかにするため、各地域。各家において実施された具体的な家文書を収集し、これらを調査・分析することとした。各家に残されることの多い記録は、婚礼や仏事など儀礼食の記録である。それらを調査するとともに、日常の食の記録のある日記等にも目配りしつつそれらの献立を調査し、地域間の異質性共通性を明らかにすることを目的とした。 昨年に引き続き各図書館・文書館の家文書の調査および未公開の家文書を調査し、その食事記録を収集して目録を作成し、一部史料についての分析をおこなった。 <結果・考察>昨年度に引き続き主として史料館史料、各家の目録から関係資料を調査し、目録を作成した。 また、古橋家文書(三河)、千秋家文書(美濃)、大前家文書(飛騨)を中心としてその婚礼文書を調査し、その特徴の概要を明らかにした。 これらの文書は、いずれも庄屋クラスの家であり、地域も隣接している。とくに千秋家は多くの婚礼文書を残しており、享保14年などの婚礼記録がある。いずれの史料も婚礼の流れは、酒の儀礼、膳部、酒宴に分けられるが、酒の儀礼に雑煮が用いられた古橋、千秋家に対して、大前家ではどの時代にも雑煮が見られなかった。また、膳部は本膳のみがほとんどであったが、二の膳付き献立もみられた。しかし、明治末期から大正期の史料には、酒の儀礼、酒宴の酒肴が先に供された後、本膳のみの食事が出されるという現代の饗応料理に近い形態となっていることがうかがえた。
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