研究概要 |
【目的】エストロゲンと構造が類似していることからフィト(植物)エストロゲンとも呼ばれる大豆イソフラボンは、エストロゲン関連のがんや、その他の生活習慣病予防に役立つことで知られている。しかし、その生体内利用や他の食事因子の影響に関する研究は極めて少ない。そこで本実験では、主要イソフラボンのゲニステイン(Gen)およびダイゼイン(Da)をラットに胃内投与し、その体内動態を観察した。また、イソフラボン配糖体の吸収には腸内細菌による糖鎖の切断が必要であることから、腸内細菌叢を変化させる食事因子である、フラクトオリゴ糖摂取の影響についても併せて検討した。 【方法】6週齢SD系雄ラット22匹に、AIN-93G精製飼料ないし、フラクトオリゴ糖(FOS)5%添加飼料を与えた。飼育開始後、5日目にイソフラボン配糖体を蒸留水に懸濁させ、Gen : 15mg, Da : 60mg/kg体重となるようにソンデで強制胃内投与した。門脈・中心静脈採血個体(各群5)にはカテーテル留置し、無麻酔・無拘束下で、0,1,3,6,12,24,48時間(h)後に採血した。残りの各群6個体からは尾静脈より採血した。尿は、24および48h後に回収した。イソフラボン濃度は、時間分解蛍光免疫法にで測定を行った。 【結果】対照およびFOS摂取ラットの門脈血において、Genでは1h後、Daでは1-6h後に吸収ピークがみられ、その後急速に減衰した。中心静脈血中両イソフラボン濃度は門脈血の約半量となった。FOS摂取ラットでは、尾静脈血GenおよびDa濃度の減少率は,対照ラットと比較して緩やかであった。また、その傾向はGenで強くみられた。FOSラットの尾静脈血中Gen濃度が示す経時変化の曲線下面積は、6-48および0-48hで対照に比して有意に増加し、Daでも0-48hで同様な結果を示した。尿中24-48hのGen排泄量も、FOS摂取により有意に増加した。 【結論】ラットでは、配糖体を多量に含むイソフラボンの吸収は極めて良いが、門脈と中心静脈の血中濃度差より約半量が肝臓に取り込まれると推察された。また、FOS投与による末梢血中Gen濃度の消失遅延は6時間後から顕著であり、24-48hのGen尿中排泄量も増加していることから、FOSはGenの腸肝循環を促進し、腸内細菌叢を変化させ、大腸での吸収を向上させている可能性が示唆された。 さらに経口投与による血中イソフラボン濃度の経日変動(1,3,5,7,14,28日)を観察したところ、イソフラボン濃度は経日的に増加傾向を示すのではなく、投与1日目で早くも上昇ピークを迎えることを確認した。また、FOS併用摂取により3,5,7,28日目でGen濃度が高値傾向を示した。
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