【目的】大豆インフラボン(ISO)はエストロゲンとの構造類似性からフィト(植物)エストロゲンと呼ばれ、エストロゲン関連のがんや骨粗鬆症の予防に役立つことで知られている。しかし、この物質の生体内利用を変化させる食品因子に関する研究は少ない。フィトエストロゲンの吸収には腸内細菌による糖鎖の切断が必要であり、その細菌叢を変えうるフラクトオリゴ糖(FOS)に着目した。FOSは大腸を介してカルシウム(Ca)や鉄の吸収を上げる効果も持つため、ISO・FOSの同時摂取によるISOおよびミネラルの生体内利用改善効果が期待される。そこで本研究では、胃切除(GX)ラットを用い、胃切除後障害である骨形成不全、鉄欠乏性貧血に対するISO・FOS併用摂取の効果について検討した。 【方法】骨形成不全に対する影響は8週齢SD系雄性ラット40個体にGXまたは偽手術を施行し、各々AIN-93G精製飼料摂取の対照、0.2%ISO、7.5%FOS、ISO+FOS(IF)添加の4飼料で6週間飼育し検討した。また、鉄欠乏性貧血に対する影響は同様な飼育条件下で、さらに幼若なラットを用いて行った。 【結果】大腿骨骨密度(BMD)、骨破断強度はGXにより低下し、FOS摂取で改善したが、ISO単独では改善しなかった。しかし、骨端部海綿骨のBMDはIFでFOS単独よりも高値を示し、骨破断強度にも反映した。血清インフラボン濃度はISO摂取で上昇し、GXラットではFOS摂取によるdaidzein(Da)からequol(Eq)への産生が増加した。また、GXによる鉄欠乏性貧血はFOS摂取により改善し、肝臓過酸化リン脂質(PCOOH)量、血清TNF-α値もISOまたはFOS摂取により改善した。 【結論】Caの吸収不全を引き起こすGXラットでは、ISO単独摂取による骨量減少抑制効果はみられなかったが、FOS併用摂取によりミネラル利用およびISO代謝が促進され、大腿骨の海綿骨領域でBMDが増加した。またGX後のPCOOH量増加についてはISO、FOS共に改善効果を示した。
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